吉武明弘先生

留学施設:Chiang Mai University, Department of cardiovascular surgery
(Chiang Mai, Thailand)
留学期間:2008年4月~現在
留学に必要だった資格 :日本医師免許 
留学中の立場: clinical fellow
留学施設の特徴:年間症例数 約1000例
留学中の経験症例数 (2008.4- 2009.2現在)
術者 80
第一助手 320

体験談
チェンマイ大学でMICSを本格的に始めるというので、教授、看護婦さんらが僕の母校に見学に来たのがきっかけとなり、2007年春に教授から‘チェンマイ大学に留学できるかもしれないけど、どう?’という電話がありました。最初チェンマイがどこの国かも知らず、タイとわかってもタイのイメージは海であったのに、実は山の中だったりしてがっかりしましたが、とりあえずその年の夏、見学に行くことにしました。見学に行ってみて、Prof.Weerachaiのオペの上手さ、人柄に魅了され、その場で‘来年の春から来たいのですが、’ということになり、2008年4月よりチェンマイに来ることになりました。
チェンマイは北タイに位置し、タイ第二の都市といわれています。寒い時期でも昼間は半袖ですごせるほど一年を通して温暖な気候(時に暑すぎる)のため、日本人や西洋人の定年後のロングステーヤーに人気の都市となっております。 
僕の留学しているChiang Mai Univ.は北タイで唯一の心臓外科を有する病院で、患者は北タイ全域、あるいは周辺諸国(ビルマやラオス)からも手術を受けに来られます。 ここでは年間1000例ほどの手術をスタッフ4人とレジデント3人+僕で行っています。レジデントは3人いますが、大抵1人か2人は他の病院や循環器などをまわっているので、一人か二人しか残りません。基本的に手術はスタッフとフェローの二人で行うので、第一助手or術者になり、週10件ほどの手術に入れます。最初からカニュレーションやSVG,RA採取をやらせてもらい、次にASDや単弁置換、2弁やCABGをやらせてもらえますが、最初のうちはスタッフが前立ちをやってくれましたが、そのうち症例によってはレジデントや一般外科のレジデントがオペに入れるときは彼らを前立ちにやることになります。ここでは1人立ちすることに教育の主眼が置かれていることもあり、レジデントは看護婦さんを前立ちにカニュレーションを一人でやっていますし、実際最年少スタッフは昨年夏からスタッフになった30歳の若手ですが、年間200例以上、どんなオペでもレジデントを前立ちにこなしています。また、ここでは特に小児班や動脈班などに分かれておらず、どのスタッフも小児から解離まで、全てをこなしております(教授は今では小児はやりませんが、)。こちらではいまだASDやRheumatic なM弁などの手術が多くあり、若手心臓外科医のトレーニングとしては良いのではないでしょうか。ただ、移植、新生児手術、あるいは経済的(保険上?)な理由で不整脈の手術などはほとんど行われていません。
朝7時よりICUから回診が始まり、週2日は8時からカンファレンス、9時半頃から手術となります。大抵の手術は3,4時間で終わるので、午後から2件目をやり、夕方には手術終了。当直はレジデントがやるので、家に帰ることができます。オペ室やICUでは皆タイ語で会話しますが、スタッフは皆留学経験がありますし、看護婦さんも英語がかなり話せるので、僕の場合は基本的には英語で話しています。回診の時など患者さんからタイ語(北タイの方言らしい)で話しかけられますが、何を言っているのか全然分かりません。
こちらのレジデントはほぼ毎週Journalカンファレンスで発表させられ、皆勉強熱心です。新しい知識や技術をどんどん実際の臨床に取り入れようと皆非常にActiveで、東南アジアのパワーを感じ、刺激を受けます。
生活面ですが、多分一番これがネックだと思われますが、確かに東南アジアの気候、風土、食事に合わない人はいますし、そういう人には不向きかもしれません。幸いにも僕の場合はこの暑さや香辛料の効いた料理に馴染むことが出来たために、居心地の良い生活になりました。そして、家族もまた大変この土地を気に入り、楽しんで生活することができています。また、タイ人は微笑みの国というだけあって皆明るく、また親日家なので人間関係で苦労することはあまりありません。ただ、熱帯病などに関しては、さすがに気をつけなければいけないかもしれません。マラリアなどは都市部では見られないらしいですが、食中毒やデング熱などの感染症はかなり多いと聞きます。僕自身、タイに来て2ヶ月目に出血性デング熱に罹り入院した時にはとんでもないところに来てしまったなあ、と思い日本に帰りたくなりました。
治安ですが、昨年バンコクで空港閉鎖や暴動が起こりましたが、ここチェンマイでは全く危険な感じはしませんでした。小都市ですし、ここでは以前よりあまり政治的な対立はないようです。周りの日本人でも、危ない目にあったなどという話しは聞いたことがありません。比較的治安は良いほうだといわれています。
最後になりますが、タイの病院、心臓外科といっても施設によってかなり違いがあり、一概にタイの心臓外科留学に関してこれを参考にすることはできないと思います。実際タイ最大のSiriraj Hospitalなどは、症例数もタイ国内で一番多い(年間1300例ほど)ですが、その分レジデント、スタッフも多く、レジデントなどは術者としての経験は望めないようです。実際彼らは時々チェンマイにも研修に来ています。またチェンマイ周辺でも、この先心臓外科を立ち上げる計画が数病院であるらしく、ここでも今後はsimple case、レジデント症例は減るかもしれないとのことす。