中須昭雄先生

留学施設 Mayo Clinic, Rochester, MN

留学期間 2015年7月~2017年7月

留学に必要だった資格 ECFMG certification (step 3不要)

留学中の立場 Advanced clinical fellow

留学施設の特徴 Dr. Schaff、Dr. Dearaniなど世界的なsurgeonが在籍し、全米病院ランキング総合1位、心臓外科部門2位に入る病院。年間手術症例数約3000例。

留学中の経験症例数
術者 600

体験記

 医学部6年生の冬にusmle step1を取得し、沖縄県立中部病院で初期研修、後期研修を修了後、2年間石垣島にある沖縄県立八重山病院に一般外科スタッフとして勤務後に医師7年目から心臓外科医として沖縄県立中部病院に戻りました。その間残りのusmleを受験する時間的余裕がなく失効してしまい、やむなく初めから再受験し卒後10年目でECFMG certificateを取得しました。同時にstep3もpassしようやく10年越しにusmleの呪縛から解き放たれました。

 ECFMG certification取得後すぐに全米約50施設にemailをCVとともに送り、数施設からpositiveな返事を頂き、最終的に電話面接にてMayo clinicへ留学することとなりました。

 ECFME certificateの取得も大変でしたが、position獲得後Visa取得や病院との契約のための書類仕事はとても膨大かつ複雑で、何度も心が折れそうになりました。前沖縄県立中部病院長・前ハワイ大学医学部プログラムディレクターである真栄城優夫先生、前沖縄県立中部病院長松本廣嗣先生、沖縄県立中部病院心臓血管外科部長天願俊穂先生の協力を頂きながら、なんとか一つずつクリアーし2015年7月より念願の臨床留学をスタートさせました。

 最初の6ヶ月は英語のストレスと日本とは全く違う病院のシステムに慣れるのにかなり苦労しました。日本では当たり前だった術後管理は基本的にICUの医師とnurse practitioner(NP)/physician assistant(PA)によって行われるため術後患者がECMO/IABPが必要なくらい不安定な状態でも基本的には術後ICUへ患者を搬入しsign outをすれば外科的な問題(出血、その他再手術の必要な状態)がない限り呼ばれることはありませんが、初めはそのような患者をおいてそのまま家に帰ることにすら抵抗を感じていました。

 最初の1ヶ月は2年のfellowを終えられる直前の、現在West Virginiaでclinical instructorとして活躍しておられる村下貴志先生とご一緒させて頂くことが出来、公私ともにとてもお世話になりました。

 フェロー及びレジデントは約10名いるattending surgeonのserviceを一人ずつ担当し3ヶ月毎にローテーションします。外国人フェローはアジアを中心とした世界各国から約6、7名、正規のレジデントは一般外科のトレーニング終了後、胸部外科のトレーニングとして3年間のトレーニングで各学年2〜3名。最終学年はchief residentとして自分の入りたい手術に優先的に入り、serviceを持つことはありませんが、移植や大動脈解離などの緊急手術の際に呼ばれ手術を担当します。

 具体的なトレーニング内容としては、朝6時に病院へ到着し自分のserviceの患者10名前後を回診し、その日のplanをNP/PAと相談し最終的にattending surgeonに確認します。回診終了後カンファレンスのある日は出席し手術室へ。手術中に起きる様々な相談などは全てNP/PAが対応してくれています。

 手術は各attendingが1年で約300例、多い人で400例行なっており、1日に多い時で20例の手術を10の手術室で行なっています。Dr. Schaffは70歳近い年齢ながら手術日には1日4例の手術を2つの手術室で斜めに行いますが17時までには最後の患者がICUへ入室するという信じられない速さと正確さで手術を行い、その姿はまさに圧巻です。Septal myectomyはほぼ一回の心筋保護液の投与で手術が終了し、術後LV—Aortaのgradientはほぼ0、SAMも消失します。Attending surgeonの一人のDr. Maltaisは私より1つ年下でしたがMICS mitralやrobotic mitralだけでなくVADやtransplantもこなす新進気鋭の若手であり、実力があれば正当に評価する米国の懐の深さを再確認すると同時にほぼ同年齢ということも非常に刺激を受けました。

 Traineeはcoverしているserviceの手術症例に手洗いして入る形で、術者になれるかどうかはattending次第、またattendingとの信頼関係次第です。ほとんど全ての手術を執刀させてくれるattendingもいれば、開胸・閉胸のみでカニュレーションすらやらせてくれないattendingもいます。

 幸い私は英語でdisadvantageがありましたが手術では評価されDr. SchaffにIMAの採取でお褒めの言葉をいただいたり、ほとんど全ての手術を任されることもありました。2年間で経験した手術はバラエティーに富み、CABGを始め弁形成(大動脈弁含む)、弁置換、VAD、MICS mitral、robotic mitral、HCMに対するseptal myectomy、先天性手術などで合計600例ほどでした。2年目の最初の半年は、Mayo clinic, RochesterのHeart and Lung transplantのchairmanであるDr. Dalyのもとrobotic mitral以外の手術はほぼ術者として執刀させていただきました。極東から来た英語もままならないアジア人に僧帽弁形成ですら執刀させてくれる懐の深さと教育者としての姿に感銘しました。

 Mayoでの2年間は心臓外科としてもですが、家族としても絆が深まりました。子供達も皆英語はもちろん全く喋れませんでしたが、地元の小学校に通いながら半年もすると上の小学生二人同士で話す際は英語のみで話すくらい英語が上達し、父親はあっという間に抜かされ英語の発音を直されるくらいでした。 またResearch fellowとしてこられている様々な科の日本人の先生方と家族ぐるみでお世話になり、夏の週末はほぼ毎日プールサイドでBBQを楽しむなど日本では考えられない生活を送ることが出来ました。

 Mayoでの2年を終了後は米国内の他病院にてさらに研鑽を積む予定でしたがVisaの関係で困難となり無念の帰国となりました。

 アメリカでの2年間は色々な意味で困難の連続でしたが、圧倒的な手術症例数とそれに裏打ちされた確かな技術、無駄のない合理的な医療システムという医療の面だけでなく、かけがえのない医師仲間との出会いやアメリカの大自然を満喫することも出来、非常に充実した2年間となりました。