新川武史 先生

留学施設:Children's Hospital of Philadelphia 
34th street and civic center blvd., Philadelphia, PA 19104

University of Michigan
5144 Cardiovascular Center, 1500 East Medical Center Drive, Ann Arbor,MI 48109-586

留学期間:2008/7/1- at CHOP,  2006/7/1-2008/6/30 at U of M

留学に必要だった資格:
CHOP: USMLE 1,2,3
U of M: None (Japanese physician's license and some connection)

留学中の立場:
CHOP: clinical fellow(人数は年による、伝統的には2人)
U of M: international fellow(アメリカ人のclinical fellowが別にいる)

留学施設の特徴:CHOP: ICU24床、年間症例数650-750
U of M: ICU15床、年間症例数500-600

留学中の経験症例数

下記参照

体験談:
CHOPはまだ日が浅いので、ミシガンの事についてのみ書きます。

ミシガン大学はミシガン州一の大都市、デトロイトから車で約45分の田舎町、アナーバーにあります。アナーバーはミシガン大学以外には、Domino Pizzaの本社があることで有名で、滋賀県彦根市と姉妹都市でもあります。ミシガン大学は全米でも最も歴史のある州立大学の1つで、全米一大きいアメフトスタジアムがあることでも有名です(11万人収容)。ミシガン大学病院は、大学病院棟・Mott こども病院・心臓センター(CVC)・がんセンター・研究棟などが複雑に絡まった巨大な建物で、US Newsの病院番付で毎年全米トップ15内に入っています。

2007年のUS Newsのこども病院番付ではミシガン大学Mottこども病院は全米4位でした。
ミシガン大学小児心臓血管外科では、Dr. Bove/Dr. Ohye/Dr. Devaney/Dr. Hirschの4人のアテンディングサージャンの他に、小児心臓外科フェローが1人(任期1年)、胸部外科レジデントのローテーターが1人(任期2-4ヶ月)、インターナショナルフェローが1~2人(任期いろいろ)がいます。そのほかにも病棟管理や患者家族のケアをしてくれるナースプラクティショナーが5人、外来の予約業務から色々な事務仕事をしてくれる秘書さんが2人、マネージャー(事務的なことをすべてやってくれます)1人など、医師以外の人がたくさんいます。年間症例数はすべての症例を合わせて500~600例ですが、重症例やre-doの患者さんが多いことが特徴です。手術枠は2つの手術室を使って午前・午後の2枠ずつ、20枠/週あります。手術室の問題と(ポンプを回せる部屋が2つしかない)アシスタント数の限界から、同時2例以上は手術はやりません(超緊急手術、NICUでのPDAや病棟での閉胸は除く)。

アメリカの正規トレーニング制度について少し触れますと、心臓血管外科医になるためには、まず一般外科トレーニングを4~6年(外科レジデント)、その後に胸部外科トレーニングを2~3年(胸部外科レジデント:成人、小児、一般胸部などをローテート)する必要が最低限あります。実際はその間に2-4年研究を行ったり(基礎研究/臨床研究)、胸部外科レジデントの後に専門に分かれたフェローシップ(小児・成人・移植・大血管など)を1~2年行うのが一般的です。トレーニング期間中、胸部外科レジデントや各専門フェローには、執刀する機会がどんどん与えられます。ミシガン大学では胸部外科レジデントは2年のトレーニング中に小児をローテートするのは2-4ヶ月ですが、PDA、ASDを中心に最低10例は執刀、約50-100例の第一助手を経験します。小児心臓血管外科を専門として選択したフェローは、100例/年ほどの執刀機会があります。新生児重症例(NorwoodやASOなど)は回ってきませんが、TAPVRなどは執刀する機会があります。トレーニングの後にポジションを得てアテンディングサージャンとなると一人前として扱われ、手術の執刀は術式の選択も含めて自分の責任となります。自分で手術ができる代わりに、どんな難しい症例でもどんなにトラブルになってしまった症例でも自分で何とかしなくてはいけません。小児では最初の2年ほどは何かしらのバックアップが付き、いざとなったら上司のヘルプが呼べることが多いそうですが、スタッフになった直後から年配の先生と同等の成績が求められると言う意味では厳しい世界です。

ミシガン大学でインターナショナルフェローに求められていた仕事は、手術に第二助手として入る事(必要に応じて第一助手をやったり執刀が回ってきたりもします)、病棟での外科処置(閉胸・ドレーン挿入・ECMOなど)を必要に応じて行う事です。手術場では、アテンディングサージャン/手術室看護師さん達はみな良い人で、手術中につたない英語で質問しても快く答えてくれます。手術室看護士は心臓チームが組まれており、各アテンディングサージャンに1対1で対応するメインの手洗い看護士がいます。彼らは各アテンディングサージャンの手術の進め方や癖などを知り尽くしており、黙って手を出していれば必要な器具がどんどん手の中に入ってきます。手術に入るのは基本的には第二助手ですが、人手が足りないと(レジデント/フェローが当直明けで帰ったりなど)第一助手を当然のようにする事になります。病棟での閉胸なども病院のシステムに慣れてくると一人でやっていました。夜間はOn-callとなっており、必要が応じたら(急変や臨時手術)ポケベルで呼ばれます。休日は朝のICUラウンドをフェローと一緒に回り必要に応じて処置をしますが、全て終われば(ほとんどの場合昼前に終わります)家に帰ってOn-callとなります。インターナショナルフェローが複数いれば、みんなで分担制をとっていました。

ICU/一般病棟(Stepdown floor)は小児循環器科医が中心に術前・術後管理を行っています。小児循環器科医師はエコー・カテ・ICU・外来など役割が分かれており、ICUメインの医師は集中治療医の資格を持つ人も多いです。手術後ICUまで患者を運び申し送りをしたら、その後はICUチームが術後管理をします。もちろん患者の様子は見に行きますが、外科処置以外のことに実際に手を出すことはまれです。ICUは当番制なので担当は医師も看護士も毎日/毎シフト変わります。しかし多くの事にプロトコールが決められており、術後の利尿剤はこう、急変が起こったらこう、不整脈が起こったらこうなど、皆が同じ事をする様にして意思疎通が迅速にできるようになっています。

ミシガンでのインターナショナルフェローはミシガン州の限定医師免許を取得するため(ECFMG不要)、薬の処方が出来ないなど多少の制限があります。また小児心臓血管外科にアメリカ人正規フェロー・レジデントがいるため、トレーニングはどうしても彼らが優先で我々は黒子的存在でした。ただ手洗いできる症例数はかなり多く(ほとんどの国内施設の2-3年分?)、ほぼ全ての術式を見る事が出来るため、留学時期としてもっとも良いのは卒後5-7年目位ではないかと思います。

最後にアナーバーでの生活ですが、アナーバーはアメリカにしては治安が良く(田舎のため?)、日本人もかなり多数(留学中の大学生、研究している人、Law schoolやBusiness schoolに来ている人、企業の駐在員など)生活しており、日本人コミュニティーも発達しています。大学町のため非アメリカ人も多く、英語がうまく喋れない人にも寛容で、英語スクールも多数あります。ゴルフ場も安いです。こぢんまりした町ですが冬の寒さにさえ目をつぶれば、とても住みやすい所です。

長くなりましたが、これで体験談とさせて頂きます。興味がある人はいつでもご連絡下さい。


写真はMichiganでの私の送別会の時もので、University of Michigan小児心臓血管外科のAttending surgeon、フェロー、OR nurse達の写真です。修了証書を持っている私と家内(左)、その右の青いシャツの背の高い男性がチーフのDr.Bove、その右の口ひげを生やした男性がfellowship program directorのDr.Ohyeです。私の後ろには阪大の帆足先生がいます。

umope