吉川泰司先生

留学施設および期間
1. Yale University, New Haven, CT (2005年7月―2007年6月)
2. Brigham and Women’s Hospital, Boston, MA (2007年7月―2008年6月)

留学に必要だった資格 ECFMG Certificate

留学中の立場
1. Adult cardiac surgery fellow
2. Senior clinical fellow, Minimally invasive cardiac surgery fellow

留学先の特徴
1.年間症例数成人800例、小児150例、移植10例
2. 年間症例数成人1500例、移植20例

留学中の経験症例数:術者270例、第一助手386例

体験記:
2001年10月に研究留学目的で米国に渡りました。その後諸事情により、研究の傍ら本格的にUSMLEの勉強をすることになり2005年1月にECFMG Certificateを取得致しました。研究をしながらの試験勉強も大変でしたが、その後clinical fellowとしての就職先を得るまでがその何倍も大変でした。まずは、全米の93施設に自分の履歴とpersonal statement(要するに売り込みです)を添え、メールを出しましたところ、30施設から返信がありました。そのうち10施設ほどからは良い感触のレスポンスをいただき、そのうちの4施設(University of Michigan, Yale University, Mayo Clinic, University of Pittsburgh)にインタビューを受けに行きました。その際に確認したポイントは、給料、ビザの問題、正規レジデントおよびフェローの数とORの部屋数、そして毎日手術に入れる環境でした。また実際に働いているレジデントに研修内容を聞いたりもし、その結果、最終的にYale Universityで臨床研修を受けることに決まりました。

ここで、非常に重要なビザについて説明します。私の場合、最初、J-1 researchでありましたが、J-1のカテゴリー変更は不可能ではないにしろかなりの時間と労力が必要であると知人から聞いておりましたので、研究留学中にH-1bに変更しておりました。本当はそのままH-1bで臨床研修をしたかったのですが、USMLE Step3がまだ通っておらず(H-1bではstep 3まで必要)、それでも一日も早く臨床に復帰したかったため、H-1bを諦めてJ-1 clinicalまたはO-1のビザを取得することを考えました。しかし、University of Pittsburghを除いてO-1をサポートしてくれる施設はなく、仕方なく制限の多いJ-1に戻すことになりました。(このECFMGがサポートするJ-1 clinicalには、2-year home country residency policyなるものが必ず付帯し、研修終了後は日本に2年間帰る必要があり、また、施設変更も基本的には困難です。)

 Yale Universityは、Adult cardiac surgery のAttending surgeonとしてはAcademic practiceが2人、Private practiceが3人でした。ORは4部屋です。正規レジデントは毎年2人で、2年のプログラムのため合計4人いることになります。正規レジデントの最初の1年は、半年胸部外科、もう半年VA Hospitalで、2年目は、半年先天性、もう半年がAdult cardiac surgeryというカリキュラムになっています。このため、Adult cardiac surgeryを回る正規レジデントは基本的には1人で、先天性を回っている正規レジデントは小児の症例がない場合、Adult cardiac surgeryの症例に入ってきます。Fellowは私を含め二人で、Adult cardiac surgeryのサービスにつきます。先にも述べましたようにORは4部屋ですので、基本的に毎日、手術にはいる環境にはあるということになります。当直は月5,6回程度、ICU、病棟とも基本的に正規レジデントとfellowでみており、ICU、病棟ともfirst callが我々のため(general surgeryのレジデントのローテーションがないので)、かなりの雑用もこなさなければなりません。また、hand-on-trainingという観点からすると、private practiceのsurgeonはまったく何もさせないsurgeonもいたりして、あまり教育的ではなく、術者としてのトレーニングとしては、特にオペ件数の減った2年目(1年目はAdult cardiac surgeryが年間1200例だったのに対し、なぜか2年目は800例と激減しました。)は満足のいくものではありませんでした。Yaleでの経験数は術者130例、第1助手345例でした。

 もう少しアメリカで臨床研修を続けたいとの思いから、もう少し術者としてのトレーニングの受けることができる施設を探しました。しかし、J-1 visaのため制限があります。幸運にも、Brigham and Women’s Hospitalにsenior fellowの枠が空いており、またtitleをminimally invasive cardiac surgery fellowとして、ECFMGにJ-1の延長を申し出、なんとか延長が許可されました。Brigham and Women’s HospitalはHarvard medical schoolのteaching hospitalで、年間1500例の大人の心臓手術が行われており、hand-on trainingという観点からも名高い病院です。特にminimally invasive cardiac surgeryはDr. Cohnを筆頭にBrighamの売りになっています。移植は20例程度、VADは30例程度です。ORは4部屋あり、成人心臓に回る正規レジデントは1年目2人、2年目1人(2年目がチーフレジデントになります)、そのほか、senior fellowが4-5人の大所帯となります。Brighamでの研修内容ですが、attending surgeonにもよりますが、術者としてのトレーニングはまずまず満足のいくものでした。しかし、大所帯ゆえの複雑怪奇なところも多々あり、Brigham特有のつらいシステムがあります。それはoutfellowというシステムで、outfellowの週はまったく手術に入れず、その週は、ICU management、外来のお手伝い、術前準備、informed consent、 コンサルトといった、一切の雑用をこなさなければなりません。これは苦痛の極みです。outfellowはdayfellowとnightfellowに分かれるのですが、dayfellowは朝6時から夜6時まで、nightfellowは夜6時から朝6時までで、一週間まるまる手術に入れずひたすら業務をこなします。フェローと正規レジデント、合わせて7,8人いて、およそ3週間に一回outfellowが回ってきます。すなわち、2週手術に入り1週お休みの形で、1年の1/3はoutfellowの期間で手術に入れないわけです。ただ、手術の週はただひたすら手術に専念できる環境にありました。私が1年間に入った症例数は181例で、そのうち術者症例は140例でした。
もう少しアメリカに残ることも少しは考えたのですが、アメリカ単身赴任が3年になること、hand-on trainingの観点からもそこそこ満足したこと、ビザの問題もあり、2008年6月末に日本に帰国しました。

もし何か御質問等ございましたら、いつでもメールにてご連絡ください。

桜橋渡辺病院 心臓血管外科
吉川泰司
yoshikawayasushi@aol.com

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写真1 Yale Universityのgraduation partyにて
左:Dr. Elefteriades, 右:Dr. Hashim

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写真2? Brigham and Women’s Hospital
Dr. Cohnと