若手心臓外科医の会(JAYCS)発足によせて

若手心臓外科医の会 初代代表
三重大学大学院医学系研究科 胸部心臓血管外科

高林 新


私は平成8年卒で、小児心臓外科を専門としています。現在三重大学医学部附属病院で先天性心臓チームの2番手として、年間80-100例の先天性心疾患の外科治療を行っています。卒後5-6年目に福岡市立こども病院に国内留学して経験を積んだ後、現在の施設に戻り6年以上経ちました。今後研究休職の形でミシガン大学に半年間の留学を考えています。平成20年7月に北米東部の7施設を3週間かけて見学してきました。その時にニューヨークで高山先生とお話する機会があり、以後「若手心臓外科医の会」に賛同する立場として参加しています。現在本会の代表(事務局担当)を高山先生よりご指名していただき、微力を尽くしているところです。高山先生、宮城先生にはこの会の発足にあたり多大なご尽力をいただきました。初めの一歩を踏み出すことはなかなかできることではありません。この場をお借りし、感謝の意を表したいと存じます。本当にありがとうございました。

私は卒業してから約13年間、心臓外科の修練に全力を傾けてまいりました。その中で体を壊したり、つらい時期もありましたが、現在心臓外科を志して本当によかったと思っています。結果と実力がこれほどまでに結びつく仕事は他にそうはありません。競争も激しく、体力、気力も要求される厳しい業種であるからこそ得られる満足感ややりがいは、かけがえのないものだと感じています。術後の子供たちの屈託のない笑顔を見ることが、何よりこの仕事を選んでよかったと思える瞬間です。私は自分を社会人として、一人の人間として、育ててくれた心臓外科に対する感謝の気持ちから、何らかの恩返しをしたいと考えるようになりました。ですから現在までの経験から、私が若い時期にあったらよかったと思える会を後輩に残していくことを30代最後の仕事としたいと思っています。

本会の特徴の一つとして、海外留学経験のある先生方から多くの賛同を得ていることがあります。円高や国際化社会で国境という垣根は以前に比べると低くなっており、本ホームページでも多くの先生方から留学体験記が寄せられています。国際的な視点から考えることがより重要になるこれからの時代に、若手の先生方が国際的感覚を身につけるきっかけになれば素晴らしいことだと思います。今後北米や欧州などの「若手の会」との交流も計画しています。

日本の心臓外科は専門医制度や初期、後期研修制度など変革の時代を迎えつつあります。医局に所属しない医師が増えつつある現状で、心臓外科を志す若手医師が意見交換や交流によって必要な情報を得ることができるシステムが求められています。平成20年初夏の私たちの出会いから本会がスタートしたように、若手同士が横のつながりを作ることで建設的なエネルギーが生まれることを期待しています。本会は従来の「若手の会」とは異なり、ある集団の特定の意見ではなく、様々な年代や地域、出身、専門の枠組みを超えた会にしていきたいと考えています。そのために若手心臓外科医の様々な側面を代弁できるシステムとして、地域別以外のワーキンググループ活動を平成21年には開始する予定です。今後様々な立場からの意見が出ることが予想されます。しかし、日本人で日本語を話すことができる若手心臓外科医という共通点は、世界的な視点からすると大きな意味を持つと考えます。大きな視野から互いを尊重して議論を深めることで問題を解決していきたいと思います。

改めて強調しておきますが、本会は既存の学会や卒後16年以降の心臓外科医と対立する立場ではありません。また、本会の最大の目的は若手心臓外科医の交流、意見交換の場を提供することや現状をきちんと整理することで、今の制度を変えることではありません。日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会の重鎮の先生方には、これからも様々な形でご相談させていただきたいと思います。今後ともご指導の程、よろしくお願い申し上げます。

現在「若手」の会員の先生方もいつかは「若手」を育成する立場になります。修練医が指導医の立場をよく知ることは将来よき指導医になる上で役に立つと思います。その逆に指導医も修練医の立場をよく知ることが重要です。互いを知りコミュニケーションすることによって、手術の質を落とすことなく技術を伝承することが可能になると思います。最近の日本の心臓外科の成績は世界でもトップレベルですが、本会の活動を通じ、世代間のギャップを埋めて成績をさらに良くする役割を果たせたらと考えています。

最後に学生の方にメッセージです。心臓外科は厳しい世界です。でも、人生を賭けるに値する素晴らしい職業の一つです。心臓外科に関するご質問やご意見などございましたら、気軽にご連絡ください。

 本会が未来の優秀な心臓外科医を育成する一助となり、日本の心臓外科の発展に少しでも寄与できるものとなるよう努力していきたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。