荒川 衛 先生

参加セミナー: 第46回 日本血管外科学会参加レポート

山形テルサ・山形国際ホテル
Evidenced-based Vascular Surgery
〜山形の地で熱く語ろう、血管外科の検証と新時代を〜

2018年5月9日 - 11日
第46回 日本血管外科学会に参加しましたので報告します。


・胸部大血管

 胸部の一番のディスカッションポイントは Uncomplicated type B dissectionにTEVARするか?
と思いました。
Uncomplicated type B dissectionとはStanford B型急性大動脈解離の中でも臓器還流不全や
破裂を伴わないものでこれまで、保存的加療が当然と考えられてきた領域に、外科的治療の介入余地が
あるかというところです。入院中は特に変化はなくとも、数ヶ月、数年後に拡大し
手術となる症例があるので予防的TEVARがどれだけ効果があるかというとことになります。
 すでにComplicatedはTEVARの方がOpenより優位性は示されておりますが、uncomplicatedに対する
予防的TEVAR(premetive TEVAR)は議論の余地があります。 Uncomplicated Type Bは 保存が基本ですが、退院時生存例の3年生存率が75-80%とされています。 つまりは、のちのち手術になる患者が相当数いて、予後も悪いとい言われています。
(Tsai TT et al. Long-term survival in patients presenting with type B
acute aortic dissection: insights from the International Registry of Acute
Aortic Dissection. Circulation 2006)

 どのような症例で、のちのち手術が必要になるかというリスクは、男性、偽腔部分開存、
大動脈径40mm、早期の血管径拡大、若年発症、大弯に偽腔、intimate tear 10mmと報告されています。
留置より中枢側に解離が生じるとType A dissectionになって別の手術が必要になります。
これをRTAD(retrograde type A dissection)といい、またステントグラフトが斜めに入るなどで
新しいEntryを作ってしまうことをSINE(stentgraft induced New Entey)といい
RTAD, SINEをどう防ぐかもテーマでオーバーサイズに留意することと
末梢をstraightに留置することが挙げられていた。

またType A dissectionに対するTEVARも行われています。
本邦でも 近位下行にentryがある症例ではTEVARがClass IIaとしてガイドラインでも取り上げられていますが、
さらに手術不能例60%死亡すると言われているのでresucueのTEVARが今後増える可能性があります。

留学時代のボスが招請講演でtype A dissectionの講演をしていました。
Malperfusionを有する症例でどうするか。Malperfusionのcareが先行か、Central operationか、
それには結論が出ないが、Malperfusionが静的(Static)か動的(dynamic)かで変わるとのことで、
それ自体には議論になるが、日常臨床で思っていることがStanford大学でも
同様の議論をしているということで難しい領域であるということを再認識しました。

〜他の先生からの感想〜
時代はどんどんendovasucularになっていますが、弓部セッションではgold standardは
openでrepairありあらためて外科医としてのopenでの腕を磨く必要性を感じました。


・腹部大血管

 腹部のテーマは破裂に対するEVARだと思いました。
成績ももちろんですが、どういった症例に、どういったデバイスが、在庫の問題もあるので
準備はどうするか。また、OPENとの術後管理の違いなど、新たな知見がありました。
腹部大動脈瘤破裂に対する手術の術後にはAbdominal compartment syndrome(ACS)が問題になります。
OPENの場合は、開腹による影響に加え、大量輸液、ショックなどで、高度の腸管浮腫がおき、
腹圧が上がることでさらなる虚血をきたします。しかしながらEVARでは開腹はしないので、
もともとの血腫や、Endoleakが大動脈外に漏れ、血腫の増大をきたすことで起こり、
それを制御することが鍵のようです。

〜他の先生からの感想〜
自験のruptured AAAに対する EVARをACSで一例失っていたので、rupture EVARのsessionを
興味深く拝聴しました。ACSをいかに予防するかが鍵であり、術前Fitzgerald 3-4や
瘤径が大きいものがACS high risk群であると考えられるという発表が大変勉強になりました。
また、瘤内へのNBCA塞栓により更なる救命率向上にも期待をしたいと思います。
IFU外EVARの長期成績が比較的よかったことや、術前IMA coilingが術後type2発生を
有意に減らした報告も大変興味深かったです。

〜さらに他の先生からの感想〜
感染瘤に対してステントを留置する報告が増えていると感じた。
二期的にopen repairを行っているが全身状態不良例ではそのままにしているケースも多々あり
そういった症例でも予後がよい発表が多く印象的であった。


・末梢血管

浅大腿動脈領域のステントグラフトViabahnをどう使用していくかであったと思います。
Viabahnはステントグラフトなので、これまでのステントとは違い、ステントの目を這って
内膜が増殖してくることはない。しかしステントのエッジに内膜増生または血栓閉塞する
可能性があるので注意が必要です。Self expandableなので前拡張をしっかりとすることが重要です。
また、側副血行路は潰してしまうのでステントというよりはバイパス手術の意味合いが強いです。
今後、腸骨動脈領域にBalloon expandableのGore Viabahn VBXというステントグラフトが
使用できるようになる詳細はまだ知らないが、Gore Excluderの脚より小口径、
Flexibileで折れなさそうな印象である。

上記レポートでした。

文責: 練馬光が丘病院 心臓血管外科 荒川 衛

写真1
留学自体にお世話になった、Stanford大学 胸部心臓外科 Michael P Fisdchbein先生と

写真2
懇親会での花笠踊り 圧巻の完成度