荒川 衛 先生

留学施設
Falk Cardiovascular Institute, Department of Department of
Cardiothoracic Surgery, Stanford University School of Medicine

留学期間: 2013年5月〜2015年7月

留学中の立場: Postdoctoral research fellow

留学中に必要だった書類: 医師免許証、給与証明書(日本からのサポート)

PI: Michael P Fischbein M.D., Ph.D.

留学中のポジション: Postdoctoral fellow

留学中の共同研究先: Gladstone Institute, Cardiovascular Disease, University of California, San Francisco

研究期間: 2013年5月〜2015年6月

研究先のポジション: Visiting Scientist


研究留学の経験

心臓外科医として臨床で技術を習得する一方で、研究を行うことを選ぶ心臓外科医もいる。
特に海外留学では、まず研究留学から海外生活をスタートして、臨床留学へポジションを変更する場合も
あるが、自分の場合は期限付きの研究留学であった。

アメリカ合衆国への留学準備

ビザ取得が難しいと言われるアメリカ合衆国。留学先のポジションは引き継ぎであったが、
そのポジションを引き継ぐためには要件があって、それを満たす必要があった。
先方からは初年度、給料がないため、それを日本側の助成金、補助金等で最低金額を確保する必要があり、
給与証明書が必要であった。ポジションはPostdoctoral Fellowship、いわゆるポスドクであったが、
PhDではなくMDでポスドクになることはできた。
要件を満たして、ビザの発行という形になったが、その時は大阪にいたので、大阪にあるアメリカ総領事館に
申請書を送り、面接もそれほど待たずに予約できた。
面接も、スタンフォード大学に医師で大学院生が研究留学するというよくあるパターンだったからか、
特に問題なくビザを取得することができた。

スタンフォード大学の概要

アメリカ合衆国カリフォルニア州パロアルト市付近に本部を置くスタンフォード大学。
サンフランシスコから50kmほど南東に位置し、シリコンバレーの中心である。
キャンパスの広さは全米屈指で約1000万坪あり、東京ドームが約700個入る広大な敷地を有している。
それに加え、北カリフォルニアの気候で夏は一切雨がふらずほぼ毎日快晴である。
研究生活を行うには環境が重要であることを思い知らされる空間であった。
留学中の2013年のノーベル賞受賞者にも二人が名を連ねており医学・生理学賞には「細胞の輸送システム」
としてトーマス・スードフ氏が、化学賞には「分子動力学シミュレーション」 マイケル・レビット氏が
選出された。
胸部心臓外科は歴史的に有名であり、Norman Shumway医師が心臓移植のパイオニアとして名高く、
さらに急性大動脈解離の分類であるStanford分類は今日でも幅広く臨床で使われている。
現在も、大動脈弁輪拡張症に対するDavid手術を積極的に行っており、さらには心臓移植や
補助人工心臓治療も行っている中核施設である。

UCSF Gladstone研究所

さらに、iPS 細胞の研究を行うためカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校Gladstone研究所でも
共同研究を行った。Gladstone研究所はノーベル賞受賞者の山中伸弥教授が博士研究員として
所属していた研究所であり、現在も山中先生の研究室が存在する

研究内容

留学中は、Marfan症候群の大動脈瘤の発生機序の解明を中心に研究を行った。
動脈硬化の研究を行っている施設は多いが、大血管の動脈瘤形成について研究しいている施設は少ない。
さらに現在、腫瘍領域で注目されている制御系のRNAであるマイクロRNAに注目し、動脈瘤発生と
マイクロRNAとの関連についてMarfan症候群モデルマウスを用い解析しさらには治療法としての
応用を期待している。
iPS細胞からの分化誘導や、さらにはiPS細胞などの多分化能を有しない細胞から、遺伝子導入を主とした
リプログラミングも行った。IRB承認を得て、ヒトMarfan症候群患者の皮膚からiPS細胞を樹立した
疾患iPS細胞という分野の研究を行った。

研究室のメンバー

研究室はスタンフォード大学胸部心臓外科のMichael Fischbein医師が研究責任者であり、
ドイツLeipzigハートセンター、韓国延世大学からの留学生と、スタンフォード大学医学部の学生、
また医学部を目指す大学生などで構成されている。世界から集まってくる留学生と意見を交わし、
刺激を受け研究を行うことができる施設であった。

語学

謙遜と言われるかもしれないが語学は苦手であって、高校大学の友人からも心配された。
実際、語学では苦労した。大学時代、研修医、大学院と英会話スクールに通ったことが何度かあり、
留学直前は頻度多く通ったが、正直それで通用はしなかった。まず、生活をセットアップするために
アパートを借りて、携帯電話を契約して、ライフラインのセットアップに苦労した。
研究でもミーティングの内容が聞き取れない、報告も理解してもらえないそんな経験もあった。
なかなか自分の主張を通すことは難しく、NOと言えない日本人であった。

スタンフォード大学が紹介してくれるプログラムが何個かあり、その中で、定年退職した方が
ボランティアで英会話をしてくれるプログラムがあった。それに応募し、紹介していただいた方が
非常にいい方で、徐々に英語も上達した

最終的に、英語で相手を説得する、討論することはなかなか難しかったが、
それは自分の性格もあるので無理にはしなかった。ただNOとも言える日本人になれたと思う。

その他の活動

スタンフォード大学、シリコンバレーには世界各地から「質のいい文化」が集まっている。
各国の美味しいレストランもある。(それでも日本のレストランの方が口には合うが)よく東海岸、
西海岸と比較されるが、まさに西海岸の文化であった。面白いことは世に出して、評価が得られなければ
撤退するという意識で、ベンチャー企業がたくさんあり、それに投資するベンチャーキャピタルも
たくさんあり、大成した企業を買収するエコシステムが成り立っている。
そういう企業に務める方々と出会う機会もあった。

スタンフォード大学初のBio Designという医療機器開発のベンチャー企業養成のプログラムに
携わる方々とも知り合うことができ、日本バイオデザインの立ち上げを担う日本人との交流の機会もあった。
また、心臓外科医を目指す大学生、高校生が心臓外科を経験する「サマーセミナー」があり、
世界から選抜された学生とも交流し、実際に心臓外科のレジデントやフェローが練習をするSimulation lab
で夜な夜な練習をするレジデントとの関わりもあった。
それ以外にも数多くの、「日本ではできない経験」ができた。研究生活なので、外科医としてとの
トレーニングは中断になる。しかし、帰国して1年半経つが、アメリカ留学の経験があってこそできることが
数多くあると実感している。
考え方、次第であるが、私は研究留学で多くのものを得たと確信している。